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[TPP反対 農業だけじゃない 5] 僧侶 競争社会 優先なのか  (10月26日)

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新潟県柏崎市の真宗大谷派祐光寺の僧侶、中下大樹さん(36)は、東日本大震災で亡くなった人たちを弔うため、頻繁に被災地を訪れている。津波でわが子を失った母親、家族を失った人たちに寄り添いながら、感じることがある。「悲しみに浸っていては、厳しい競争社会を生き抜けない」「一刻も早く立ち直らなくては、世界に置いていかれる」といった切迫感だ。悲しむより先に環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で他国との競争を強いる、この国の方針に違和感を抱く。

中下さんは僧侶として、同県長岡市の仏教系ホスピスで、末期がん患者をみとった後、宗派を超えて「寺ネット・サンガ」を設立し、自ら代表に就任。寺院や医療従事者らと共に、生活に困った人たちの葬送支援や孤独死を防ぐ活動をしている。

孤独死、自殺などこれまでに2000人もの死を見続けてきた。その中には大震災がきっかけで多重債務に苦しみ、自殺した農家男性もいる。被災地で自らがれき撤去や、炊き出しをし、僧侶として葬儀にも立ち会った。供養で訪れた岩手、宮城、福島3県の仮設住宅は約3000軒に上る。

悲しみさえ癒えず、復興もままならない被災地に、のしかかるTPP。「2万人もの方たちは一体、何のために亡くなったのか。その人たちの死を決して無駄にしてはいけない。今こそあらゆる価値観を見直すべきだ」と提案する。

TPP参加により、自由価格で高額な医療が受けられる「混合診療」が全面解禁されれば、国民皆保険は崩れる、と指摘する。「1%の金持ちと99%の貧しい人が生まれる。一言でいえば弱い人は死んでください、ということ。農業も同様の構図だ」。規制を緩和すれば、被災地復興につながるという考え方も「目先のことしか考えていない」と言い切る。

中下さんを突き動かすのは「痛みが分かる人になってほしい」という死にゆく人たちから託された言葉だ。「TPP参加は痛みを伴う。地域の絆や言葉、伝統、祭り・・・。一度失えば取り戻せない。農業だけでなく、地域の誇りさえもTPPは壊し、画一化しようとしている」。それでも参加を決断するのか――。中下さんは問い掛ける。