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オウム裁判終結、オウム家族の会などが「麻原以外の死刑回避」求める

11月21日、最高裁判所が、地下鉄サリン事件などで殺人などの罪に問われたオウム真理教元幹部・遠藤誠一被告の上告を棄却。これで教祖・松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚と12人の実行犯の死刑が確定し、一連のオウム事件をめぐる刑事裁判が全て終結しました。
これを受けてオウム真理教家族の会とオウム真理教被害対策弁護団は、松本死刑囚以外の実行犯らの死刑回避を求める声明を発表。日本脱カルト協会は最高裁と法務省に対して、上告棄却への抗議、同じく死刑執行の回避や減刑の検討などを求める要請書を送り、3団体共同で記者会見を開きました。


■「坂本事件の捜査に怒りと後悔」

小野毅弁護士
東京・霞が関の裁判所内にある東京司法記者クラブで行われた会見ではまず、オウム真理教被害対策弁護団の事務局長・小野毅弁護士が、サリン事件の被害者への社会的ケアの継続を訴え、オウム真理教の後継団体であるアレフとひかりの輪について「自主的に解散して欲しい」とした上で、声明の趣旨をこう説明しました。

「裁判が終わったが、まだ国や社会がきちんとなされていなかったことがあるのではないか。それは、オウム真理教とは何だったのか、止められたのではないか、そういう観点からの検討だと思います。たとえば坂本堤弁護士の事件は、最初は失踪事件と扱われていましたが、実際には部屋の中にたくさんの血痕があったことがわかった。(そのとき警察が)ちゃんと調べてくれれば、少なくともそれ以降の事件は、止められたのではないか。そこに私たちの強い怒りと後悔があります。そういうところを検証することをやっていただきたい。松本智津夫以外の人たちの多くは、カルト問題やオウムに対してきちんとしたことをやっていく大事な証人として、死刑は執行していただきたくない。逆にもっと世の中にとって大切な役割を担ってもらいたい」

■「死刑囚に語らせて社会に役立てるべき」

西田公昭氏
続いて、カルト問題に取り組む脱会者、弁護士、宗教者、研究者などで作る日本脱カルト協会(JSCPR)の代表理事・西田公昭氏(立正大学教授)が、最高裁・法務省に対する要請書の趣旨を説明。

「彼ら(実行犯たち)は決して極悪非道な人間では、もともとはない。にもかかわらず、なぜ彼らがこうした事件を引き起こしたのかについて、我々はオウム事件に学ばなければならないし、そこまで理解する裁判経過ではなかった。心理操作とかマインド・コントロールという言葉がこの事件にかんして使われてきたわけですが、そういう視点で全員の被告人が裁判を受けたわけではありません。マインド・コントロールという観点で一人一人をもう少し丁寧に扱って欲しかった」(西田氏)

「このままでは、麻原のような悪いカリスマはまた日本あるいは世界の中で人を操り事件を起こすことはあるだろうと思います。第二のオウム真理教とでも呼ぶべき集団ができ第二のサリン事件が怒らないと保証はできない。彼らをこのまま死刑にして社会から抹殺してしまうよりは、彼らがなぜこんな事件に巻き込まれていったのか、なぜ正しいと信じて、人を救済するなんていう気持ちで反社会的な行動をとってしまったのかということを、彼らに語らせて社会に役立てる方が建設的ではないか」(西田氏)

■「麻原は間違いなく、ほくそ笑んでいる」

永岡弘行会長
オウム真理教家族の会(旧・被害者の会)の永岡弘行会長は、「何の関わり合いもない方々に償うことができない大罪を犯した我々の子供のことを考えたときに、お詫びのしようもございません。大変申し訳ございませんでした」と頭を下げました。

「死刑の判決が出ている人には、死んでしまいたいという人もいました。実際に場内において自殺までした人もいます。私は彼らに対して、『卑怯なことをするな。償いというものは、お前たちが生きていって、二度とこういう問題を起こさないために果たす義務というものがかならずあるだろう。そうすべきが、お前たちに課せられた今後の働きなんだ。親である我々にも大いなる責任がある』と言って、お詫びもして参りました。だから、死刑にしてもらいたくない」(永岡会長)

「みなさんもご存知のように土屋(正実)被告が、私が接見したときに『麻原は詐病だ』と言っていました。彼(麻原)は間違いなく、ほくそ笑んでいる。側近であった土屋からその言葉を聞いて確信を持った」(永岡会長)

そして、再び「償うことのできないことをしでかしてしまった親たちの代表としてお詫びしたい」と頭を下げました。永岡会長の妻・英子さんは、同会で死刑確定者の死刑回避を求める署名活動を行なっていることを報告しました。

「(署名活動は)今年で5年目になりますが、こんど、教祖を除いた12名の名前を(署名用紙)入れました。なかなか御理解いただけないところもあるかと思いますが、なんとかご協力いただきたいと思います」

同会がメディアを通じて署名活動への協力を呼びかけるのは、これが初めてとなります。

■「オウムを潰すためにも死刑囚の証言が必要」

会見では、浄土真宗の僧侶でJSCPR理事の瓜生崇氏も発言。自らがオウム真理教ではない別のカルト団体に12年間所属していた経験をもとに、こう語りました。

「社会的に悪いと言われていることでも、(カルトの)中の人は、本当にその人を幸せにしたい、世の中を救いたいと思ってやっている。オウムの信者もそうであったと思います。それは悪いことではあったかもしれませんが、自分たちと関係ないところで行われたことではありません。人生の歯車がほんのちょっと狂ったならば、ここ(司法記者クラブ)にいる人たちも、オウムの信者と同じように、こういう団体に入って多くの人を殺めるような犯罪を犯す可能性があったということを知っていただきたいと思っております」

最後に、JSCPR理事・滝本太郎弁護士。

滝本太郎弁護士
「坂本一家を殺した人を許したわけではありません。一人たりとして被告人を許すわけではありません。しかし(麻原以外の)12人の死刑は執行しないで欲しい。坂本弁護士が救いたかったのも、実行犯を含めた麻原以外の信者です。加えて、小野弁護士が言ったとおり、坂本事件を神奈川県警がしっかり捜査していればその後の事件はなかった」(滝本弁護士)

「(死刑が確定した)12人は、深く反省している者、まだ夢の中にいる者、いろいろあります。でもそれぞれが、やるべきことがあります。死刑を執行するのではなく、死ぬまで、何年かわかりませんが反省をし、現実感覚を持って本件を反芻し、再び同じようなカルト事件を起こすことがないように証言をさせてやってほしい。それを伝えることができる貴重な題材です。オウム集団を潰すためにも必要なんです。オウム信者が一人もいなくなるまで、オウム問題は終わったことにならないと思います」(滝本弁護士)

「12人を死刑にすることで一番喜ぶのは麻原彰晃だと思います。社会への恨みと、破滅させたいという恐ろしいほどの煩悩。最後に麻原を喜ばすことになるのは決して許せない」(滝本弁護士)

■何も解決していない

この日の午前中には、同じく刑事裁判終結を受けて、サリン事件被害者遺族が別途記者会見を開いています。報道によると、ここでは遺族から「刑がどう執行されるか見守りたい」という言葉も出たようです。

サリン事件の被害者にとってオウム事件は無差別殺人事件であり、子供が信者になってしまった親たちや「カルト問題」の構造を解き明かすべきとする人々とは意見も立場も違うでしょう。オウム真理教家族の会は、もともと「オウム真理教被害者の会」という名称でした。しかしサリン事件以降、「被害者」を名乗るのをやめています。信者の親たちが、加害者である子供の親としてその名称を名乗る訳にはいかないと判断したからです。

オウム問題に取り組むある団体の関係者は、刑事裁判終結を前に「これを過ぎると、もうメディアがオウム問題に注目しなくなるのではないか」との危惧を口にしています。21日の会見後には、オウム真理教家族の会の関係者たちから、こんな声が聞かれました。

「メディアからの質問がほとんどなかった。若い記者ばかりで、もうオウム事件を知らないのだろう」

また、家族の会の中でも、オウム真理教と直接的な緊張関係にあった90年代に比べて、「信者の親の側の危機感も弱まってきているように思えるケースもある」となげく関係者もいます。

危機感が風化しつつある気配もありますが、オウム問題自体は終結していません。